徒然なるままに

読んだ本について、あーでもないこーでもないと勝手に考えるブログです。

こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ 岡田淳 作

 こそあどの森シリーズの番外編です。80分読了。

 こそあどの森の登場人物たちが、子どもだった時の思い出話が短編集という形で収録されています。読みやすさは、抜群。どれもいい話だなぁ〜としみじみしちゃう感じです。岡田淳さんの『ふしぎの時間割』のような感じでしょうか。このシリーズを読んでいた方が楽しめますが、それぞれの話がシリーズからは独立しているので読んでいなくても、楽しめる構成になっています。

 『子どものころのことって、おとなになっても、つながっているんだね』という最後の文が、そのまんまこの本の言わんとしていることだと思います。だからこそ、子供時代の体験って大切ですよね。どんな人に出会うか、どんなものに出くわすか、どんな困難にぶち当たるのか、どんな本と出会うのか。これからも、担任する子供たちには、ステキな本と出会ってほしいなぁ〜。そんなことを考えながら、しみじみ読み耽ることができました。

面白さ星10で星8

https://www.amazon.co.jp/こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ-こそあどの森の物語-岡田-淳/dp/4652204299/ref=sr_1_1?crid=20F13SYSYCDNJ&keywords=こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ&qid=1690371287&s=books&sprefix=こそあどの森のおとなたち%2Cstripbooks%2C188&sr=1-1

 

ぼくらの七日間戦争 宗田理 作

 不朽の名作。4日間240分で読了。この本は教室にずっと置いてありましたが、これまで全く読む気がしませんでした(文字も小さいし、400ページ近くも読む気が起きない)。でも、高学年を担当すると毎回、必ずと言っていいくらい子供達(特に男子)から圧倒的な支持があった本でもあります。

 作品の舞台背景に全共闘があります。しかし、私は学生運動の知識に乏しく、読んでいてもそこら辺は、正直珍紛漢紛でした。

 高学年くらいの思春期を迎えたくらいの子供たちには、内容的にはスカッとするんでしょうか。大人が読むと、モラハラパワハラ・セクハラ・体罰のオンパレードです。いやー、それないっしょ笑 みたいな無粋なツッコミはダメだとわかっていても、それをせずにはいられなくなります。

 舞台の学校は、ちょうどまさに、スクールウォーズです。

 「俺は、今からお前たちを、殴る!!歯ぁ食いしばれーーー!!」みたいな感じです。昔は、そんな生徒指導をしていたんですね〜と読んでて可笑しくなります。

 『みんなうまくいかんのは、子供を人間だと思ってるからだ。奴らは動物だと思えばいいんだ。犬や馬を調教するように、鞭で仕込めば必ずうまくいく。これが秘伝だ。君たちもよく頭に入れておきたまえ』

と校長先生が言っちゃうシーンに思わず時代を感じてしまうこと間違いなしです。

 

 『これは、大人優先の発想です。身勝手とは思いませんか?我々は、一度だって、子供の目で世界を見たことがあったでしょうか?子供は、大人の囚人ではないのです』

 この最後の方のシーンに、この本の伝えたいことが詰まっている感じでした。この言葉は、今も大切にしたいものです。

 総じて、子供は笑いながら楽しく読める、大人も笑いながら楽しく読める良本でした。

面白さ星10で星8

https://www.amazon.co.jp/ぼくらの七日間戦争-角川つばさ文庫-宗田-理/dp/4046310030/ref=sr_1_2_sspa?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=1U613QJ4JHRVM&keywords=僕らの七日間戦争&qid=1690283349&s=books&sprefix=僕らの七日間戦争%2Cstripbooks%2C248&sr=1-2-spons&sp_csd=d2lkZ2V0TmFtZT1zcF9hdGY&psc=1

 

 

国語を楽しくープロジェクト・本作・同時異学習の進めー 首藤久義 作

 職場の人と交換した本の中から選書。現在の連綿と続く国語教育に疑問を持っている人向けの本でした。

 全体的に、具体的なメソッドがいくつか記されていますが、その根拠となる理論とかエビデンスはあんまり出てこないです。国語の授業で同時異学習(ワークショップ)をする、というよりも国語の教科書を使った授業の中で、それを行うためには?という文脈で、色々な実践が書かれています。

 「翻作」については、とても詳しく記されていました。「翻作」については、ライティング・ワークショップをやっていると、自然とそれをする児童がたくさん出てくるので、こちらの知識として持っておくといいな、という内容がいくつかありました。本書の中でも、ライティング・ワークショップについては、簡単に触れられていました。

 国語の授業を変えたい、と思っている人に向けての入門書という感じです。

https://www.amazon.co.jp/国語を楽しく~プロジェクト・翻作・同時異学習のすすめ-首藤-久義/dp/4491051410

 

こそあどの森の物語 水の精とふしぎなカヌー

 こそあどの森の物語シリーズの第11巻です。70分で読了。

 同じ時間軸で展開される話が、2話収録されています。物語の結末が対比されている構造で、前半部は超自然的なものが展開に絡み、後半部はそのまま雄大な自然の力が展開の根幹にあります。けど、そこから何か登場人物たちが葛藤する場面は皆無とまでは言わないけれど、あんまりありません。ひたすら、おー!とか、あー!とかいって自然や超自然的なものに感動・驚愕する場面が結構ひたすら続く感じです。

 とても読みやすく、ここまでこそあどの森シリーズの本を読んできた人にとってはこの世界観を楽しむことができるかな。トワイエさんの家ができる過程とかの、ファンを楽しませるエピソードが結構多い印象です。ですが、この巻からでも、全然読み始められるように、自然な感じで色々な補足説明が挿入されているので、丁寧なつくりだなぁと思います。

 面白さ星10で星7

https://www.amazon.co.jp/水の精とふしぎなカヌー-こそあどの森の物語-11-岡田-淳/dp/4652200277/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=2WU2I2MIX98Q8&keywords=水の精とふしぎなカヌー&qid=1689892516&s=books&sprefix=水の精とふしぎnカヌー%2Cstripbooks%2C270&sr=1-1

 

ホームレス中学生(児童書版) 田村裕 作

 お笑いコンビ・麒麟の田村さんの自叙伝。90分で読了。

 これを読むと、壮絶な子供時代を過ごしたんだなぁ、と思う。家族がいきなり「はい!解散!」になった時、自分ならどうするだろう・・・

 前半は、家族が突然解散になり、中学2年生での浮浪生活とそこからの脱却の経緯が書かれていて、後半は、作者の家族に対する思いが温かく書かれています。お父さんを恨まない、むしろ、今こそ力になりたい、と思える作者の気持ちにただただ脱帽です。

 内容自体は、総ルビで3年生でも読めそうです。若干難しい言葉もありますが、信じられないほど丁寧に言葉の意味の注釈までそれぞれのページに載っています。そして、何より文体自体もユーモアが結構あって、サラサラ読めちゃいます。

 ノンフィクションの入門として、とてもいい本でした。

面白さ星10で星8

https://www.amazon.co.jp/児童書版-ホームレス中学生-田村-裕/dp/4847017943/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=1UXYWVX5QPQB8&keywords=ホームレス中学生+児童書版&qid=1689767061&s=books&sprefix=ホームレス中学生+児童書版%2Cstripbooks%2C251&sr=1-1

 

わすれものの森 岡田淳 作

 岡田淳さんのデビュー作です。一度は絶版になったものを、加筆修正して再出版したものです。絵本から図書への橋渡しとして選書。40分読了。

 2年生でも読める内容です。かといって、厚過ぎず、内容も読み応えがそこそこあり、ちょうど良いチャレンジ本として提示できる本になりそうです。

 主人公は3年生のつとむ。音楽会を前にして、ドッジボールに夢中になり(男子あるある)、リコーダーを朝礼台に忘れ、結果として音楽の授業が来るまで、置きっ放しにしていたことを忘れてしまうとこから、物語がスタートします。

 思い出して、朝礼台に取りに行ったのに、もうそこにはリコーダーがなく、どうやら忘れ物が集められる不思議な世界に持ってかれてしまい・・・みたいな感じです。自分のものは大切にしようね、忘れられた物は、忘れた人を忘れないよ とめっちゃ訴えてきます。

 岡田さんの作品は、最後にいつも、おぉ!となる展開がありますが、この本も、最後には、あ〜だよね〜、とうまくオチを付けてくれます。やっぱり面白いよ、岡田淳さんの本は。

 岡田淳の世界観に浸る、入門編の本として、読む価値ありです。

面白さ星10で星7

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子どもと読むということワークショップ 2日間

2日間、9時30分〜16:30まで、課題本(テラビシアにかける橋 キャサリン・パターソン作)をひたすら読み、ひたすら語ると言うことをやってきました。岩瀬直樹先生がデザインしたブッククラブの体験会。
 
まず、『テラビシアにかける橋』について
言わずと知れた名作です。数年前に、一度読んでいて、いたく感動した記憶はあったが、その時は主人公が死と向き合い、立ち直っていく部分がハイライトで、正直他の部分はあんまり・・・な感じでした。
再読してみると、後半のハイライトよりも前半の主人公・ジェシーの心情が揺れ動く様がとても複雑で、語ることがいっぱい。なんで、以前読んだ時には、全く気づけなかったんだろう、と恥ずかしくなるくらい、見落としていたものがたくさんありました。土台にあるであろうテーマも、それこそ友情、恋愛、家族愛・・・読者によってたくさん読み解くことができる感じ。今回の再読で、一番感じたテーマは、家族への愛。ジェシーは、自分に対する家族の愛が見えていなかったけど、親友の死によって、初めてそれが見えていく過程が、何よりも一番綺麗な部分でした。前半では、ジェシーにつっけんどんな父親やくたびれた母親、嫌味な姉妹が、本当は、我が子・兄弟をここまで愛していた、と言うのがひしひしと伝わってきました。いつか、自分の娘とこの本でブッククラブをしてみたい。子どもが読むと、ジェシーの再生の過程にきっと惹きつけられると思います。ここまで、一つの文学作品を味わい尽くした体験は、とても得難い体験でした。
 
②2日間通して、考えたこと、感じたことは?どんな学びや気づきがあったのか?
 今回の研修のような構成的なブッククラブをしたことはないので、まずはやってみたいと思った。「読んだことから意味を作り出すなんざ、読者の自由だろうが!」と言う、なんとも乱暴な読者反応論に染まっていた時代の私は、超・絶・非構成的なブッククラブを年間で3〜4回やり続けていた時期がある。その時は、予読はするが、結果として今回の研修みたいに作品を味わう所までは勿論行けてなかったなぁ。ま、それはそれで意味があったとは思うけど。けれど、今の考えでいくと、日々のRWで、読むスタミナを培ったり、多読でしか身につけられないのようなものを、いわゆる知識・技能だとするならば、ブッククラブが思考・判断・表現になるだろうな、と言う感じ。
 章ごとに、こちらで質問を立て、足場をかけていくことの大切さ。自分はそこまで文学作品を読み込める人間ではないので、やっぱりガイドがあると読みやすいし、話しやすい(そんなことは当たり前だけど)。そこら辺は、デザインする先生によって、きっと考え方は違ってくるだろうな、とも思う。何を目的に、ブッククラブをやるのか。当たり前のことだけど、そこがブレたらやってもあんま意味ないだろーなーと思います。
 
③この2日間はこれからにどんなふうにつながっていきそうか?
 今回の濃いブッククラブを通して、作品に対する自分の読みが矯正・深化した感があるので、この実感を持ってブッククラブをデザインしたり、カンファランスできたりできそう。少なくとも『テラビシアにかける橋』を使ったブッククラブは、今の自分にとって十分満足できるコンテンツとして提供できる自信に繋がった。あとは、教材研究。読み続けて、自分の中のストックを増やさないとダメですね。 
④読書ノート(+振り返りノート)は、学びにどんな機能がありそうか?
 最早、今の勤務校だと古典的な扱いだが、紙に書いて表現するってやっぱり大事だなと思った。自分の思考が整理されるし、書いていると自然と言葉が次々出てくる感覚があった。今年度、読書に関することは全部PCで完結できるシステムにしてしまったけど、この読んだことが積み重なっていく感って結構大事だなと思った。読んだことを文章に生成するのはPCでもできるけど、なんでも自由に表現できるのは、やっぱり紙の強みだと思う。