徒然なるままに

読んだ本について、あーでもないこーでもないと勝手に考えるブログです。

第176回LAFT 井本陽久さんを呼んでのワークショップ

できるようにさせたい

 

できるようにしないといけない

 

何か身につけさせたい

 

何か身につけさせなきゃいけない

 

ほんとにそうなんでしょうか。それは子供が望んでることなんでしょうか?ってことをしつこく問われているよーな気がするワークショップでした。

 

子供は期待に応えようとするけど、それは、ありのままの自分を自分自身で否定していることに他ならない。子供の本当の生き生きした顔ってどんな顔なんでしょうか。自分の授業では、生き生きした笑顔で子供は学んでいるのだろうか。失敗を繰り返して、面白がりながら自分のやり方考え方で試行錯誤を繰り返して、たくましく成長しているのだろうか。

 

私たちは、その色眼鏡で子供を見ちゃいますが、井本さんは全然そんなメガネをかけて子供を見ない。本当に、今、そこで起きてる子供のプロセスをただ楽しんだり慈しんだりする。子供の文脈を子供の視点できちんと理解しようとする姿勢に、ただただすごいなぁ〜と思いました。

 

案外人は自分ができることを把握していない

できるできないではない

一人一人が発揮している力を見取り、それを共有していくことが学び

できるできないを問題にするのではなく、興味関心にこそこだわるべき

 

自分の教師としての在り方を問われる言葉がたくさんありました。これからも自分の力で、できることを試行錯誤していきたいと勇気をもらえる研修でした。

虚空の旅人 上橋菜穂子 作

 守り人シリーズの4作目です。精霊の守り人となった、シリーズでの準主人公のチャグム皇太子が主人公になった外伝作品です。

 あらすじとしては、新王の即位式に出席するためにサンガル王国に出向くチャグムが、サンガル王国を巡る陰謀に巻き込まれていくお話です。思った以上に、シビアな感じで外交について描かれます。なんだかよくある、実はちゃんとお前達のことを心の底から信用していたんだぜ的な感じで、国と国とが仲良くなるシーンが描かれることはなく、極めて打算的に外交が描かれています。でも、そこが妙にリアルで面白かったです。

 サンガル王国の王子・タルサンと主人公のチャグムは、共に作品内でも高潔な人物ですが対比して描かれます。王子としての人の命の捉え方や誇り、武力への考え方、出自、受けてきた帝王学・・・2人の王子としての危うさと素晴らしさに読んでいて心惹かれました。

 最後の方に、未遂には終わりますがこれまでの協力者や生贄をサンガル王国の王族が始末しようとするシーンがありますが、そこは少しやりすぎじゃないの〜とは、読者として読んでいて思いました。でも、逆にそこまで描き切る作者の緻密さに脱帽です。

面白さ星10で星

https://www.amazon.co.jp/虚空の旅人-偕成社ワンダーランド-上橋-菜穂子/dp/4035402702/ref=pd_bxgy_img_sccl_2/356-3620757-4428210?pd_rd_w=1URTD&content-id=amzn1.sym.bc57a5ab-9f02-4944-8c5c-9e1696e0d32c&pf_rd_p=bc57a5ab-9f02-4944-8c5c-9e1696e0d32c&pf_rd_r=EFTV3WNHSP8V5211YRW3&pd_rd_wg=i8NA3&pd_rd_r=d00e3768-e094-418d-8480-470b6fb9a506&pd_rd_i=4035402702&psc=1

 

夢の守り人 上橋菜穂子 作

 守り人シリーズの3巻目です。1巻目に出てきた登場人物達が、総出演です。

 あらすじは、人の心の「夢」を糧にする異界の花(ファンタジーすぎて設定を理解するのにちょっと酔った)に囚われてしまった人々を、どうやって救うのかを軸にして進んでいきます。主人公のバルサの戦闘シーンはあまりなく、どちらかというと呪術師のタンダが主人公です。そして、タンダを巡るちょっとしたロマンスが展開されます。まぁ、大切な人が木津つくのは誰も見たくないし、したくもないですよねそりゃ。

 「花」に囚われた人たちは、自分がみたい・見ていたい夢の世界で死ぬまで過ごすことになります。でも、それに打ち勝つには、自分の意志の力が不可欠になります。そこら辺がこの本のテーマなのかな、とも思いました。

花に囚われてしまった人々を前にして放つ、タンダの

『ここにいるのは自分を不幸だと思っている人たちだ。その不幸にはきっと2通りある。一つは、不死の病にかかっているとか、取り返しのつかないことをしてしまった、とかいうような行き止まりに来ている人たち。もう一つは、別の人生もあるはずなのに、なぜ自分はこんなに不幸なのかと、運命を呪っている人たち』

世界の見え方は、自分がかけているメガネで決まる。幸か不幸かを決めるのは、周囲ではなく常に自分自身であって、そんな当たり前の日々を生きていけることこそ、本当の強さなのだと上橋さんは考えているのかな?とも感じました。

展開はどきどきするし、やっぱりこの世界観の壮大さは読んでいて楽しいです。

面白さ星10で星

 

夢の守り人 (偕成社ワンダーランド) | 上橋 菜穂子, 二木 真希子 |本 | 通販 | Amazon

 

闇の守り人 上橋菜穂子 作

 守り人シリーズの2作目。3日間で読了。

 前作から舞台を主人公・バルサの故郷、カンバル王国に移し、物語は進行していきます。相変わらず、カンバル王国や地下世界の情景描写が素敵です。自然とそのシーンを思い浮かべてしまうくらい、綺麗な書き方です。

 物語の主軸は、過酷な運命に振り回されてきたバルサの再生の物語です。自分ではどうすることもできなかった過去に向き合い、これからの生きる意味を見出していく過程が胸熱の展開でした。でも、きっと小学生には、そんなバルサの生き様や選択に心及ぶことはないかのかなぁ。小学生には冒険活劇として、とても面白い読み物だと思います。

 ヴィランのジグロがもっと、悪役としてもっと際立っていたら、最高でした。あと、ルイシャ贈りの儀式の相手は、物語の中盤で「きっと、そうだろうなぁ・・・」と思っていたら、案の定のそれでした。でも、そこを世界観と結びつける自然な設定が、またこの守り人シリーズの壮大さの魅力かなぁとも思います。

  3作目の『夢の守り人』も楽しく読めようです。

本の面白さ星10で星9

https://www.amazon.co.jp/闇の守り人-偕成社ワンダーランド-上橋-菜穂子/dp/4035402109/ref=pd_bxgy_sccl_1/356-3620757-4428210?pd_rd_w=kUtTw&content-id=amzn1.sym.bc57a5ab-9f02-4944-8c5c-9e1696e0d32c&pf_rd_p=bc57a5ab-9f02-4944-8c5c-9e1696e0d32c&pf_rd_r=7GTFKT2WSYXRGZ7JDDJ8&pd_rd_wg=0wdNk&pd_rd_r=2c0e4181-6467-4b60-adfb-f8f3d45a1014&pd_rd_i=4035402109&psc=1

 

精霊の守り人 上橋菜穂子 作

 「守り人」シリーズの1作目です。4日間で読了。

 古代アジアをモデルにしたハイファンタジーです。一応児童文学ですが、とても世界観が作り込まれています。小学校高学年の子には、皇太子をどう救うかという展開にワクワクしながら読むことができるでしょう。ただ、謀や純愛、バルサやタンダの生き様みたいなものは、ちょっと難しいのでそこら辺がわかるのは中高生からでしょうか。

 とても作り込まれている反面、文体は丁寧で読みやすく描写もリアルです。狩人やラルンガとの戦闘描写は、よくここまで書けるなーってくらい見事でした。リアルなんですが、『ダレン・シャン』みたいなグロさはありません。

 いやー、しかし、もっと純粋な冒険譚を想像していたのですが、予想に反して大人の純愛が描かれていたことにびっくりしました。タンダのバルサを想う一途さに、脱帽です。

https://www.amazon.co.jp/精霊の守り人-偕成社ワンダーランド-上橋-菜穂子/dp/4035401501

 

天と地の守り人 第一部 上橋菜穂子 作

 ずっっっっっと読んでみよう読んでみようと思っていた、守り人シリーズの本。教室には10年以上、安置されていましたが読破したことはありませんでした。4日間300分で読了。

 まず、本当に児童文学なのか?と疑問に思うくらい、物語が重厚です。軍事、外交、主人公(バルサとチャグム)の生き様・・・前半部のバルサが旅立ちを決意する後ぐらいから、登場する国の複雑な国際関係や登場人物の多さに、結構ワケワカメです。理解が追いつかない。理解が追いつかないから、理解しようと読み返すけど、よく分からない。うーん、っていうかバルサとチャグムの関係ってなんなの?ってところとか、昔なんかあったの?とか、突然知らない登場人物が出てくるわなんやで、文章は読みやすいのに、話の大事な流れが分からない。もどかしい!うーん、みたいな感じがずっと続きました。

 旅は当然続くわけですが、読み終わった後でこれ絶対、1巻じゃないでしょ・・・と思い調べてみると、最終巻の1巻目という罠。そりゃ、分からないわけですよ。

 シリーズものは途中から読んでもいけるものもあるけど、守り人シリーズは、完全にダメでした。再読すると、感想がだいぶ変わると思うので、もう一度、シリーズの本を読んでから再読したいと思います。世界観は、とっても綺麗で見事なハイファンタジーでした。

https://www.amazon.co.jp/天と地の守り人%E3%80%88第1部〉-偕成社ワンダーランド-上橋-菜穂子/dp/4035403202/ref=sr_1_4?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=198DNVNAD9FAI&keywords=天と地の守りびと&qid=1693306797&s=books&sprefix=天と地の守りびと%2Cstripbooks%2C214&sr=1-4

 

バンピー いとうみく 作

 有名どころの作家さんを読み込もうと思い、選書。100分で読了。

 登場人物の設定が、開始早々ぶっ飛んでいます。主人公は、高校2年生の男の子・成。小学生の妹が3人。父親は、突然蒸発。母親は、他界。近所に住む叔母・小春が時々家事の手伝いにくる。そんな暮らしの中、突然、蒸発した父親の不倫相手(後半で違うとわかるが)の異母兄弟の妹・蛍が「私はあんたの妹」と言って突然一緒に暮らすハメになって・・・という、何ともすごいシーンからスタートします。

 壮絶なヤングケアラーであるはずの成が、悲壮感を一切感じさせず、逞しく生きていく姿にはちょっぴり違和感。でも、本当は、蛍の再生がこの本のテーマの話だと思います。

 蛍も、母親の逮捕、本当の父親との死別などなかなかすごい生い立ちを持っていましたが、そんな彼女が、叔母の小春や成との共同生活を通して、これからの自分が生きていく意味を見出していく過程が、とても心打たれました。

 父親が蒸発した理由も、後半に明らかになりますが、その選択はしてはいけなかったと思います。そしてそれを受け入れちゃう成もだめだと思いました。現実は、絶対そうならねーよ!とツッコミを入れたくなる感じでした。

 最後は、それぞれのわだかまりも解け、これからの生活が好転していく終わり方なのが救いでした。それぞれの生き方に幸があって欲しいと願うばかりです。

 小学生には、無理かなー。6年生でも読めるかなって感じです。語るなら完全に中高生向きの内容でした。

面白さ星10で星9

https://www.amazon.co.jp/バンピー-いとうみく/dp/4863897278