虚空の旅人 上橋菜穂子 作
守り人シリーズの4作目です。精霊の守り人となった、シリーズでの準主人公のチャグム皇太子が主人公になった外伝作品です。
あらすじとしては、新王の即位式に出席するためにサンガル王国に出向くチャグムが、サンガル王国を巡る陰謀に巻き込まれていくお話です。思った以上に、シビアな感じで外交について描かれます。なんだかよくある、実はちゃんとお前達のことを心の底から信用していたんだぜ的な感じで、国と国とが仲良くなるシーンが描かれることはなく、極めて打算的に外交が描かれています。でも、そこが妙にリアルで面白かったです。
サンガル王国の王子・タルサンと主人公のチャグムは、共に作品内でも高潔な人物ですが対比して描かれます。王子としての人の命の捉え方や誇り、武力への考え方、出自、受けてきた帝王学・・・2人の王子としての危うさと素晴らしさに読んでいて心惹かれました。
最後の方に、未遂には終わりますがこれまでの協力者や生贄をサンガル王国の王族が始末しようとするシーンがありますが、そこは少しやりすぎじゃないの〜とは、読者として読んでいて思いました。でも、逆にそこまで描き切る作者の緻密さに脱帽です。
面白さ星10で星